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1972年の放送開始当時、銀幕スターとして映画を中心に活躍していた石原裕次郎をメインキャストに起用した刑事ドラマ「太陽にほえろ!」…
長髪にジーンズや革ジャンなどの若者ファッションに身を包み、乱暴な言葉遣いをするかっこいい若手刑事がド派手に立ち回るという物語は従来の刑事ドラマの概念を覆し大ヒットしました。
しかも、キャスト陣は豪華絢爛…
ショーケンこと萩原健一演じるマカロニ刑事、その後を引き継いだ松田優作演じるジーパン刑事、その他にも沖雅也、世良公則、三田村邦彦、神田正輝など、錚々たる若手俳優が、清潔に髪を整えてフォーマルなスーツに身を包んでいた従来の礼儀正しい刑事像を覆し、それぞれの強烈な刑事像をブラウン管の中で競い合ったのです。
さらに、元「ザ・スパイダース」の大野克夫が作曲、井上堯之バンドが演奏した、オープニングテーマの印象も強く、インストゥルメンタルでありながらサウンドトラックが何枚もゆくられるほどの驚異的なセールスを記録しました。
1972年7月21日に放映開始し、1986年11月14日までの約14年間、ほぼ毎週放送され続けたこの作品は、シリーズのエピソード総計718話にも及ぶ大長寿番組であるために、その全貌を正確に把握することは至難の業です。
しかし、現在わかっているだけでも、いくつか再放送できないエピソードが存在しているのは確かなのです。
番組のプロデューサーを務めた岡田晋吉は「おれは男だ!」、「傷だらけの天使」、「大都会 闘いの日々」などを手がけたヒットメーカー…
岡田は後年、日本テレビから発行された自らの著書「青春ドラマ夢伝説 あるプロデューサーのテレビ青春日誌」(2003年)で「太陽にほえろ!」制作の秘話を明かしているが、それによると、あるエピソードの撮影では本物のライフル銃や鋲打ち銃を使用していたために銃刀法違反で逮捕されかけたことがあったと語っています。
そのときはすんでのところで逮捕は免れたとのことですが、それに該当するエピソードが放送禁止となったのは当然の処置なのでしょう。
また、本放送時にはなんの問題もなく使用されていたセリフが、後年のテレビにおける自主規制基準の変化によって、不適切な表現へと変わってしまい、現在では再放送できなくなったというパターンも存在していると明かしました。
これらのエピソードには現在発売されているDVDシリーズに収録されていないものも存在します。
現在視聴することは、ほとんど不可能という話が、わかっているだけでもかなりの数存在し、まさに放送禁止マニア泣かせのドラマなのです。
同作品の熱狂的なマニアたちは放送禁止のエピソードを探しては、その理由を捜そうと現在も血眼になっていますが、「プロデューサーが納得のいかない終わり方だった」、「容疑者を殺して終わる回がダメなのかもしれない」など、憶測の域を超えない状況なのです。
ちなみに初期作品が収録されているDVDボックス「メカロニ刑事編」に限っていえば、第19話「ライフルが叫ぶとき」、そして第27話の「殺し屋の詩」の2本が未収録であるが、その理由は明らかになっていません。
前者の「ライフルが叫ぶとき」は、竜雷太演じるゴリさんがライフルを構えるシーンがあるので、前述した岡田プロデューサーの著書にあった「実銃使用事件」が原因とする意見もあれば、犯人役で出演している地井武男が後年(第526話~最終話)、トシさんこと井川利三役で出演していることが問題とする説もあります。
14年もの月日を重ねた大長寿シリーズであるだけに、「かつては犯人役で出た役者が、後年は刑事役で出ている」というケースはあるようで、整合性を持たせるために放送禁止にしたのかもしれません。
ファンからすれば、そのような細かいところには目をつぶってすべてを楽しむことができる状況を一日も早く実現してほしい…
というのが本音ですが、制作者側の感情と放送局側の都合は、また別のところにあるということなのでしょう。
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