上之郷利昭のノンフィクション小説「スパルタの海 甦る子供たち」(東京新聞出版局)が原作…
1980年代、非行や不登校から少年たちを救う“現代の駆け込み寺”として社会的話題となっていた実在のスパルタ教育私塾「戸塚ヨットスクール」の実態について迫った問題作がこの「スパルタの海」です。
実際にスクールを支援していたという伊東四朗を同校校長の戸塚宏役に据え、話題の真っ最中に映画化されましたが、1983年9月の公開を控えた1982年頃から同校に捜査が入り、1983年6月に校長をはじめとした関係者15名が傷害致死で逮捕されたのです。
訓練生を暴行により死亡させた件に加え、他の訓練生2名が体罰を逃れようとして海に飛び込み死亡したという監禁致死の容疑も加わりました(2002年に最高裁で全員の有罪が確定。戸塚は懲役6年の実刑判決)。
その報道をきっかけに上映禁止運動も起こり、映画の公開は大方の予想通りお蔵入りとなったのです。
主演の伊東も「やっていいものか悪いものか疑問だった」と「キネマ旬報」(1983年7月上旬号)で明かしていますが…
監督の西河克己が不登校の息子を交通事故で亡くした経験もあってか「“いい映画ですね”と言われるような映画をつくりたい」と臨んだ意欲作であっただけに、単純に暴力を助長・礼賛するような作品ではありませんでした。
作中では徹底したしごきのシーンが描かれているのはもちろんですが、暴走する子供たちに手を焼く親たち、そしてその問題の“丸投げ”を一手に引き受ける戸塚ヨットスクールという、当時最も過激な教育現場を丁寧に描いているのです。
一部の映画評論家や石原慎太郎からは絶賛され、映画作品自体としての力もあり、2005年にはDVDが発売、2007年には特集上映で劇場公開されました。
さらには2011年10月29日からは、28年越しに全国ロードショーが実現したのです。
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