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ジャングル黒べえ…放送禁止となったのは黒人差別が原因?!




藤子・F・不二雄氏による漫画「ジャングル黒べえ」…

「ジャングル黒べえ」は、アフリカのジャングルからやってきたピリミー族の王さまの息子・黒べえが、ほどこしを受けた少年に恩返しするために少年の家に居候し、そこで巻き起こる騒動を描いたギャグ作品です。

黒ベえは肌が黒く、毛皮のような頭飾りで布を体に巻き、ヤリを持つ出で立ち。
「ベッカンコ!」の掛け声で、不思議な魔法をくり出します。

アニメ版「ジャングル黒べえ」は数多くの藤子不二雄作品を手掛ける「東京ムービー」が制作し、1973年3月からNET (現・テレビ朝日)系で放送されました。
アニメの放送にあわせて小学館の学年誌で藤子不二雄氏による漫画連載が始まり、藤子作品としては珍しいアニメ企画先行型でした。

キャラクターの原案は、なんとあの宮崎駿氏であったといいます。

東京ムービーがこの企画を共同制作の毎日放送に持ち込みましたが、当時無名だった宮崎氏を立てることに難色を示したため、急遽、藤子不二雄に依頼。
そして、宮崎氏の原案を藤子・F・不二雄氏が大幅にアレンジして「ジャングル黒べえ」が生まれました。

藤子不二雄というビッグネームを冠して放送された「ジャングル黒べえ」でしたが、裏番組は「ウルトラマンA」、次に「ウルトラマンタロウ」という強力な円谷作品で視聴率獲得に苦戦し、半年で放送は終了してしまいました。

しかし、80年代に入っても何度か再放送されたため、30代半ば以上の世代は記憶に残っている人も少なくないのではないでしょうか。

しかし、「ジャングル黒べえ」は突如として、封印作品となってしまったのです。

漫画単行本は1989年に回収されて絶版。
それ以降、アニメの再放送やソフト化もなし…
記憶にのみ残る幻の作品となってしまいました。

単行本の回収は、「オバケのQ太郎」の「国際オバケ連合」収録巻と同時期。
このため、ファンの間では、「国際オバケ連合」と同様に、「黒人差別をなくす会」の抗議を受けて封印されたという認識が広まりました。

しかし、「ジャングル黒べえ」が「黒人差別をなくす会」から抗議を受けたという記録はなかったのです。

元々、日本で黒人表現が問題視されたのは1988年7月の米国ワシントン・ポスト紙の記事がきっかけです。

「黒人の古いステレオタイプ、日本に復活」と題して、日本国内に黒人差別的な表現が横行していると報じ、米国の日本大使館に抗議が殺到…
これを受けて、サンリオのキャラクター「サンボ・アンド・ハナ」の関連商品の他、黒人のマネキンなどが回収されました。

当時は日米の貿易摩擦で米国民の対日感情が悪化していたため、国際問題に発展する可能性を危惧した企業側が早急な対処を決めたといいます。

「黒人差別をなくす会」は1988年9月、ワシントン・ポストの記事が出た翌月に発足。
この騒動を新聞で知った大阪府堺市の職員、A氏が妻と息子の3人で結成し、各企業に抗議文を送る活動を始めました。

同年12月、岩波書店が、抗議を受けた日に「ちびくろ・さんぼ」の絶版を決定。
以後、多数の出版物、黒人キャラを描いたお菓子や玩具などが回収となり、タカラやカルピスの企業マークも使用中止となりました。
「黒人差別をなくす会」からの抗議を受けて、回収、修正を余儀なくされた作品は多いのです。

黒い肌に厚い唇、腰みのを巻いた姿は、ステレオタイプの差別表現だとして、「Dr.スランプ」(作:鳥山明)、「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(作:秋本治)など、名だたる漫画作品が黒人表現を修正しました。

ここまで絶大な効果をあげた理由としては、「黒人差別をなくす会」のA氏が、被差別部落史の学習施設に勤務していたことも大きいのです。

70〜80年代は、部落解放同盟による差別表現への抗議活動が盛んで、壇上にあげられ、数百人から詰問される糾弾集会はすさまじく、出版関係者のトラウマとなっていました。

A氏に部落解放同盟の後ろ盾があると錯覚した出版社は少なくなく、「ジャングル黒べえ」は自主的に封印された可能性が高いと言われています。

果たして、「ジャングル黒べえ」は黒人差別作品なのでしょうか?

黒ベぇはただ破天荒なようで、常に正直で、弱者を虐げる不平等を嫌います。
彼が語る”ジャングルの掟”には、現代人に疑問を投げかける普遍的なメッセージが込められていました。
それがろくな検証や議論もなく、日本人的なことなかれ主義で封印されてしまったとすれば、これ以上の皮肉はありません。

さて、実は長らく絶版が続いた単行本ですが2010年5月、「藤子・F・不二雄大全集」の一冊として復刊しました。

また、2015年12月には東映ビデオよりアニメ版のDVDが発売され、約25年を経て、封印が解かれたのでした。




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