かわぐちかいじ氏による漫画作品「沈黙の艦隊」。
自衛隊の潜水艦「やまなみ」が遭難し失われました。
しかし、艦長の海江田四郎をはじめとするクルーは生存していたのです。
彼らは、日米が密かに建造した原潜の乗員として、その存在を抹消されていました。
艦長に就任した海江田は、船体に「やまと」と刻み、米軍や日本政府の指揮下を離れ、独立を宣言して大洋に躍り出ます。
大国の執幼な攻撃を振り切り、傷つきながらもニューヨークを目指すやまとの的とは…
そして全32巻の最終回「60億の出撃」はどのようなクライマックスを迎えるのでしょうか。
国連総会では、ベネット米大統領の主導で、沈黙の艦隊構想の否決と同時に、核兵器廃絶と世界政府設立準備委員会が承認されました。
しかし、国連で否定された沈黙の艦隊には、全世界から寄港要請が寄せられていたのです。
国連を後にしたベネットは自問します。
「それは本当に可能なのか」、いつしか自分の中に根を下ろした海江田に問いかけました。
その頃、海江田が収容された病院には、市民が押し寄せていました。
ベネットは心の中で咳きます。
「カイエダ、お前は、生きている人間から、生きている存在になったのだ」と。
そして、その存在がある限り、その理想はいつか実現すると確信したのです。
「世界の核廃絶の日まで“沈黙の艦隊”は存在し続ける」。
ストリンガー艦長の宣言と共に、沈黙の艦隊は出航していきました。
それを見送る深町洋をテロリストが襲います。
弾丸は逸れ、それはもはや暴力で世界は変えられないことを明らかにしていました。
そして、瀬戸内海の小島にエアメールが届きます。
それを読んだ女性は、名前のない表札を外し、新しい表札をかけました。
そこには、「海江田」と書かれていたのです。
海江田の妻は、彼のことを思い出します。
身勝手で、思いつきに夢中で目を輝かせ、行き先も告げずに行きっぱなし。
でも「好きですよ」と。
彼女が見つめる青い海では一人の少年が波間を泳いでいました。
海江田が蒔いた種は、最終回でやっと芽を出したのです。
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