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ブラックジャックは感動作品ではなく恐怖コミックスだった?!




 

1973年、「週刊少年チャンピオン」で連載が始まった「ブラック·ジャック」は、手塚治虫の代表作であり、今なお絶大な人気を誇ります。

無免許ではあるものの、唯一無二の神業ともいえるテクニックにより世界中に名を知られる、天才外科医ブラック・ジャックを主人公に、「医療と生命」をテーマにそれぞれ据えた医療漫画です。

連載当初は「漫画家生活30周年記念作品」「手塚治虫ワンマン劇場」という煽りで、手塚治虫のスター・システムによるオールスター出演がウリの作品であり、短期間で終了する予定でしたが、定期不定期合わせて10年近く続く長期連載作となり、まさに手塚治虫の代表作となりました。

この作品は読者の間では感動作というイメージを持たれていますが、始まりはそうではなかったようです…

初期作品は「恐怖コミックス」と銘打たれているように、奇病、フリークス、人体改造など猟奇色が強い作風で、2010年の文庫全集では封印、もしくは大幅
に改変されている回がいくつか存在するのです。

ファンの間でよく知られているのが、第227話の「刻印」という回。

この回はもともと「指」という題名で、ブラック・ジャックの旧友・間久部緑郎が「6本の指」を持つ多指症を患っていたという設定。
学生時代の緑郎は化け物扱いされ疎外されていた過去を持ち、人間の暗部を描いたエピソードとなっています。

現在、「指」は改稿版の「刻印」としてしか読むことができません。

初版コミックス4巻に収録されている「木の芽」は、病気を患った弟を兄が身体障がい者を表す「カタワ」と呼ぶシーンがありましたが、文庫版では削除されています。

ただし、この回は弟を障がい者扱いする兄をブラック・ジャックがいましめる場面があるため、該当のシーンが削除された現行版ではテーマが伝わりにくく
なっているという指摘もあります。

脳を手術する「ロボトミー手術」を扱ったのが、第58話の「快楽の座」。

母親の押しつけ教育により、鬱状態となった少年の頭部に感情をコントロールする機械を埋め込んだ結果、少年は笑顔を浮かべるようになりますが、凶悪な感情が心に芽生え、主治医や母親に襲いかかってしまうストーリー。

再手術を行い再び鬱状態となった少年に対し、ブラック・ジャックが提案した治療方法は、「勉強を押しつけない」「将来について無理強いしない」というしごくまっとうな教訓でした。
「ロボトミー手術」への誤解が原因で、現在封印されているのが惜しまれる回です。

他にもシャム双生児が登場する「2人のジャン」、単眼症の少年が”悪魔の使徒“と呼ばれる「魔女裁判」、精神薄弱者の少女が差別される様子を描いた「しずむ女」などが文庫版未収録となっています。

本作の「ヒューマニズムあふれる感動作」という世間一般のイメージは、あくまでもこの作品の一面でしかないのです。




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