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ゴルゴ13…過激すぎて封印作品となったエピソードとは?!




さいとう・たかを氏による「ゴルゴ13」…
リイド社の単行本は2018年9月現在190巻を数え、発行部数2億部を超える連載継続中の漫画としては日本一の長寿漫画です。

2016年に「こち亀」が終了し、超長期連載漫画の代名詞の座をますます不動のものにした「ゴルゴ13」ですが、ファンの方はご存知の通り、この作品は現実の世界情勢や事件、歴史的事実を参考にした物語が多くあります。

時代ごとのセンセーショナルな話題を扱うことが「ゴルゴ13」の真骨頂ですが、ときにはタブーに触れてしまうことがあるのです。
現時点でコミックス未収録となっている「ゴルゴ13」の物語は4話あります。

第237話「幻(ダミー)の栽培」はイラン・イラク戦争真っ只中の1986年に「ビッグコミック」(4月10日号、4月25日号)で発表された回。
物語は戦争により疲弊しきったイラン国民たちの姿を見た革命防衛軍のメンバーたちが、最高指導者のホメイニ師に戦争終結を宣言するよう直訴します。
しかし、実際のホメイニ師は老衰状態で動けず、公の場に姿を現していたホメイニ師は戦争継続派が手配した影武者だった……という内容です。

ホメイニ師は掲載当時のイランの最高指導者ですが、作中では実名で登場しています。
現在ほどイスラム過激派やテロの存在がクローズアップされていた時代ではありませんが、1991年に日本で起きたイスラム教を冒涜する内容の書籍を翻訳した大学教授が暗殺された事件が、この回が封印されるきっかけになったという説もあります。

同じ1986年「ビッグコミック」(12月10日号、12月25日号)掲載の第245話「スワップ・交換捕虜」は、「パレスチナ解放機構(PLO)」が実名で登場しています。

PLOは、イスラエルの支配下にあるパレスチナを解放することを目的とした統合機関です。
現在のパレスチナ自治政府の母体となっています。

この物語は、そのPLOがテロ活動を行うという内容だったため、パレスチナ自治政府側からクレームを受けました。
そのため、一時期コミックス収録が見送られていました。
しかし、同回は組織名を「パレスチナ解放武力同盟情報部」という架空のものにすることで、2007年「ビッグコミック増刊号」(10月17日号、12月17日号)に再録されたのです。

1988年「ビッグコミック」(8月25日号、9月10日号)掲載の第266話「バチカン・セット」はカトリック総本山のバチカン教会の内部を描いた作品。
物語の中心人物の司教は腐敗した人物として描かれ、自身の出世のためにスイス銀行にあるゴルゴの口座から金をせしめます。
さらに修道女と肉体関係を持つ好色家で、なおかつ同性愛者で小児性愛者という、おそろしく罰当たりなキャラでした。

しかし、現実にカトリック司祭による同性愛・小児性愛問題は世界中で報告され、「バチカン・セット」は一見荒唐無稽なストーリーと思われましたが、「カトリックの真実」を赤裸々に描いた物語とされ、作者の自粛によって封印されたといいます。

1993年「ビッグコミック増刊号」(2月22日号)に掲載された「告発の鉄十字」は、元ナチス将校の医師を中心とした物語。
医師はナチス時代の精神を持つ多重人格者で、夜な夜なネオナチの集会に参加しては演説をするというサイコパスなキャラ。
物語中、医師の息子が大戦中のナチスの行為を語るシーンがあるのですが、強制収容所内のユダヤ人虐殺を「その後の医療発展のための礎となった」と肯定的に評する内容。
もちろん作中には「事情には二面性がある」という注意書きが添えられているのですが、イスラエルをはじめ世界各国でナチスの肯定はタブーとされているため、この作品はコミックス未収録になったといいます。

これらの作品は掲載時の時事問題を扱ったものですが、作品発表時はなんの問題もなかった作品が、発表後に起きた事件をきっかけに問題化する可能性もあります。

例をあげると、事実の隠ぺいや経営者による現場に対する責任のなすりつけなど、2011年の福島第一原発事故を連想させる「2万5千年の荒野」(SPコミックス64巻収録)や、イスラム過激派がニューヨークに天然痘ウイルスを散布しようと企む「高度1万メートルのエピデミック」(SPコミックス182巻収録)は、IS (イスラム国)が世界各地でテロをくり返している現代では、現実にも発生し得る問題であるため、今後お蔵入りする可能性もあるのです。

宗教、民族などを要因とした戦争や騒乱、事件はこれからも数多く発生し、「ゴルゴ13」の物語のネタは尽きることはないでしょう。
しかし、それゆえに封印作品が生まれ続ける可能性もあるのです。




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