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サンダーマスク…封印作品となったヤバいエピソードとは?!




手塚治虫氏が漫画連載をした特撮ヒーローのカルト作品である「サンダーマスク」…
東洋エージェンシー(現・創通)とひろみプロダクションの共同製作であり、1972年〜1973年まで日本テレビ系列局 (NNS) で放送されました。

さて、この「サンダーマスク」が封印作品となった理由をご存知でしょうか。

1971年は円谷プロの「帰ってきたウルトラマン」や東映の「仮面ライダー」が大ヒットした特撮ヒーローものの当たり年でした。

その勢いにのって、翌1972年には、じつに13もの特撮ヒーロー作品が登場…
「人造人間キカイダー」(東映)や「愛の戦士レインボーマン」(東宝)、「快傑ライオン丸」(ピー・プロダクション)などの名作が生まれるなか、「サンダーマスク」は制作されました。

地球侵略を目論む宇宙の魔王デカンダの野望を阻むため、サンダー星連邦から地球に派遣されたサンダーマスク。
しかし、石器時代の地球に到着してしまったため、一旦眠りにつきます。
1万年後の現代、デカンダの侵略がやっと始まり、宇宙工学の権威・高瀬博士は自らの命と引き換えにサンダーマスクをよみがえらせます。

以後、サンダーマスクは平常時には地球人「命光一」に姿を変え、科学パトロール隊や、高瀬博士の遺志を継いだ娘のまゆみ、その弟の勝也とともに、デカンダが操る魔獣との死闘をくり広げます。

最初の戦いを終えた命光一に、まゆみは、なぜ侵略の1万年も前に地球にやってきたのか尋ねます。
「ちょっとロケットのスピードが速すぎて、地球の石器時代についてしまった」

要は単純なミスで、そのためにまゆみは父親の高瀬博士を失ってしまったというわけです。
これ以外にも、ツッコミどころの多い作品として、マニアの話題にのぼることが多いのです。

とはいえ、手抜きでつくられた作品だったわけではありません。

制作メンバーはウルトラマンシリーズやゴジラシリーズ、「大怪獣ガメラ」などに関わった第一線級のスタッフばかりでした。

このようなメンバーを集められたのは、「魔女っ子メグちゃん」などを制作したひろみプロダクションが、漫画の王様、手塚治虫の威光を受けていたこと
にあるのかもしれません。

ひろみプロダクション代表の斎藤ひろみ氏は、手塚プロの経理をしていた女性でした。
こうしたつながりがあったからか、手塚治虫は自身の原作でないにもかかわらず、「サンダーマスク」の放送にあわせて、小学館の「週刊少年サンデー」や学年誌などで同タイトルの漫画連載を始めています。

メディアミックス戦略の結果、視聴率は15%前後と健闘しましたが、当時のウルトラマンシリーズの視聴率が20〜30%であったこともあり、放送は半年で終了…
手塚治虫氏の漫画版は単行本化されているものの、テレビ版は1994年に中京テレビが3話のみ再放送したのを最後にソフト化もないため、封印作品として語られるようになるのです。

「サンダーマスク」が封印された原因についてはいろいろな憶測が飛び交っていますが、なかでも有名なのが現在では放送できないエピソードがあるからというものです。

その1つは第19話「サンダーマスク発狂」です。

この回の敵はシンナー中毒者の脳みそをストローで吸い、エネルギー源とする魔獣・シンナーマン。
シンナーマンの頭部は巨大な脳みそむき出しのグロテスクなデザインです。
「シンナーマンのシンナーに侵されて腐りきった脳みそと、命光一の脳みそとを入れ替えるのです!」

婦人警官に化けたデカンダの奸計で、強制的にシンナーマンと脳みそを交換された主人公・命は、高笑いをあげながら街を徘徊し、ゴミ捨て場に突っ込む、通りすがりの女性に抱きつく、出前のラーメンを取り上げて道にぶちまけるなどの暴挙を働く…
主人公がラリってしまうとは、なんともぶっ飛んだエピソードではないでしょうか。

もう一つは第21話「死の灰でくたばれ!」。

これに登場する魔獣・ゲンシロンは、当時日本初の商業用原発が稼働していた東海村の出身。
体内に原子炉があり、常に水蒸気や放射能を撒き散らします。

東海村では1999年に東海村JCO臨界事故が起きています。
悲惨な被曝事故を想起させるキャラクターが登場していては、再放送が難しいとされるのも当然でしょう。

以上の回に限らず、「サンダーマスク」は他の作品とくらべ、ハードな展開が多くありました。

しかしながら、お蔵入りの真相は「サンダーマスク」の権利関係が曖昧だからという説が有力です。

「サンダーマスク」はひろみプロダクションと東洋エージェンシー(現・創通)の共同制作でした。
しかし、70年代はまだ権利処理がいい加減で、東洋エージェンシーが強引に放送権を主張し、フィルムを持ち去ってしまったといいます。

しかし、1998年の判例で、当時の「放送権」は地上波のみで、現在、広まっている衛星放送やケーブルテレビには適用されないことになったのです。
つまり東洋エージェンシーがフィルムを現在も保管し、そのフィルムを提供すれば、「サンダーマスク」の衛星放送での再放送は可能という状況にあります。

しかし、現在、ガンダムの商品化権で莫大な利益を上げる創通にとって、トラブルの火種となりそうな「サンダーマスク」は、おそらく負の遺産なのでしょう。
関わりたくないのも当然、なのかもしれません…。




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