子供向け特撮番組に深いテーマを織り込む円谷プロですが、彼らが「大人向け」を手がけた場合、どのような作品ができあがるのでしょうか?…
「恐怖劇場アンバランス」は、「ウルトラQ」や「怪奇大作戦」の怪奇路線を引き継ぐ形で、1969年7月に制作がスタートしました。
これまでは、あくまで大人も楽しめる子供向け作品だったのに対し、「アンバランス」は完全な大人向けを志向したのです。
一話完結のオムニバスで、鈴木清順氏、藤田敏八氏、黒木和雄氏などの名監督が担当…
その多くは、円谷プロのプロデューサーが新宿ゴールデン街の行きつけの店で集めたというから驚きです。
出演俳優もひと味違いました。
蜷川幸雄氏に唐十郎氏、野坂昭如氏など、作り手として名高い面々を起用したのです。
しかし、完成した作品は「あまりにも怖すぎてスポンサーがつかない」という理由で、テレビ局から敬遠されてお蔵入り…
放送されたのは3年後の1973年でした。
その際、番組冒頭と最後に、青島幸男氏による解説シーンが加えられたのです。
放送時間は深夜11時15分…
裏番組が「11PM」で視聴率が伸び悩み、わずか3カ月で終了してしまいましたが、実験的な演出も多く、印象深い作品ばかりでした。
そんな「アンバランス」でさえ、過激すぎて映像化を見送った脚本がいくつか存在します。
うち一つが、「おそろしき手鞠唄」…
幼い娘を無残に殺害された母親・日野良子が、娘の遺体の一部を食べることで、娘に起きた出来事を追体験し、犯人に復讐するストーリー…
娘を殺した犯人は、大会社の重役で家族もあるが、戦争で出征中、現地の住民を虐殺するうち、幼女を襲って殺すことに快感を覚えるようになった男でした。
良子は男に近づいて肉体関係を持ち、その息子も誘惑して父子関係を壊します。
また、娘にも父の悪行を告げて責め立て自殺に追い込みました。
後ろ盾だった妻と義父から見放され、廃人同然となった犯人の男を、良子はゴミ処理場の冷蔵庫に閉じ込めて放置…
そして冷蔵庫の上には大量のゴミが載せられていく…
というストーリーで、脚本は「怪獣使いと少年」を手がけた上原正三氏でした。
もし映像化されていたら、トラウマ必至の作品となっていたでしょう。
問題となる作品が減少した現在だからこそ、本気の円谷制作の怪奇ドラマ復活が望まれるのかもしれません。
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