時代を超え、世界中の人々から愛されている名作「ムーミン」。
故郷であるスウェーデンを舞台に登場するムーミンたちは、正式にはムーミン・トロールと呼ばれる妖精の一種です。
温かみのある絵や、ムーミン達の愛らしい外見に魅了され、様々なグッズを持っている方もいるのではないでしょうか。
作者のトーベ・ヤンソンは画家でもあり、ムーミンの原型となるキャラクターは小説執筆以前にもたびたび描かれていたそうです。
造形的には、トーベが10代の頃、次弟ペル・ウーロフ・ヤンソンとの口ゲンカに負けたときに、トイレの壁に悔し紛れに描いた「SNORK(スノーク、とても醜い生き物)」として描いたものが、ムーミントロールのルーツであるとされています。
ネーミングは叔父の家へ下宿をし学校へ通っている時代、勉強の合間に冷蔵庫から食べ物を失敬しては夜食にしていたのですが、ある時に叔父から注意され、「この裏にはムーミントロールというお化けがいるからつまみ食いはやめなさい。首筋に冷たい息を吹きかけてくるぞ。」と言われたことがきっかけなのだそう。
さて、ムーミンといえば、動物で表すとカバのような外見をしています。
そのため、つい体もデカいように感じてしまいますが、実際の設定は大きく異ります。
トーベ・ヤンソンが原作に残した記述によれば、ムーミン・トロールたちは「電話帳ぐらいの大きさ」しかないというのです。
ヤンソンの故郷スウェーデンでは、電話帳のサイズは平均で10~15センチしかありません。
つまり、ムーミン一家もそれぐらいの身長しかないことになるのです。
もっとも、アニメ版では人間のスナフキンよりも少し小さいサイズだったり、原作ではときに缶詰に入ってしまうほど小さくなったりと、シチュエーションによってムーミンのサイズはころころと変わっています。
やがてトーベ・ヤンソンも、ムーミンのサイズに関しては明言を避けるようになったため、「電話帳サイズ」の設定は黒歴史になってしまったようです。
ちなみに、このとき世に登場した最初のムーミンは「黒いトロールを名付けられた水彩画で、大きな鼻と耳を持ち赤い目をした、黒いシルエットのモンスターでした。
現在のイメージとはまったく異なりますよね!
そもそも、小説は子供向けの作品の体裁をとっていますが、その内容は必ずしも子供向けでありません。
ヤンソンがムーミンを描いたのは、反戦雑誌「ガルム」が初めてのこと。
第二次大戦の戦中・戦後に執筆された初期の作品には、洪水や彗星の襲来など自然災害が繰り返し描かれています。
新聞連載漫画の大成功によってもたらされた「ムーミンブーム」にほとほと疲れ果てた頃に書かれた第6作「ムーミン谷の冬」を契機として、後期の作品はよりはっきりと内観的であり、おとぎ話の体裁をとった純文学といってよい内容を備えています。
当時、ヤンソンはナチスやロシアの風刺イラストを描いており、自然とムーミンの設定も荒々しいものだったわけなのです。
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