映画

渡辺文樹監督による映画「ザザンボ」が全作放送禁止となった訳とは?!




1992年渡辺文樹監督によって制作された映画「ザザンボ」…

市民ホールでの上映日程が決まると街中にビラを撒き電柱に貼って告知。
ツイッターやホームページを使うという概念は皆無。
告知活動からしておよそ現代のエンタメ業界とは無縁のアプローチをみせる映画監督が渡辺文樹です。

そのメジャーとの”ズレ”は作品のテーマにおいても一貫しており、過激な作品群は全作が放送禁止。

天皇家の血統に独自の解釈を唱える「天皇伝説」(2008年)、北朝鮮の独裁者の”糖尿病死亡説”を唱え拉致問題にまで切り込んだ「金正日」(2011年)、そして2016年は「安倍晋三 CIAにいいなりの男」なる新作と、闇雲ともいえるタブーなテーマばかりを選び、ドキュメンタリーと超低予算劇映画の折衷といえる手法で、監督業はもちろんほぼすべての作品で自らが主演を務め、映画制作を続けています。

もちろんその上映会場に抗議団体、圧力団体が駆けつけることはいたって日常の風景、本人も数度の逮捕歴があるという、日本インディーズ映画界の、知る人ぞ知る巨人なのです。

そんな渡辺氏の記念碑的作品の一つが、1992年公開の「ザザンボ」です。

「ザザンボ 」とは福島県で「葬式」を意味する方言です。

1976年12月、福島県田村郡三春町に住む中学3年生の知的障がい児が首吊り自殺をした事件が今作のテーマです。
自殺の原因は、窃盗事件を起こした少年が周囲からその罪を咎められ、耐えきれなくなったことにあるとされていました。
しかし、当時、福島大学の映画研究会に所属していた渡辺氏は、この事件に疑問を抱いていたのです。

「ザザンボ」 は、1990年代当時、 映画界で絶大な権力を握り、時代の寵児だった松竹の名物プロデューサー・奥山和由氏が渡辺氏に目を付けたことから始まった企画でした。

「家庭教師」(1987年)、「島国根性」(1990年)という、どちらも”家庭教師に扮した主演の渡辺が生徒の母親と肉体関係を持つ”という描写の映画を立て続けに発表していた渡辺氏に対し、奥山氏が「天皇・同和・警察問題さえ扱わなければ好きなものを撮って構わない」といって3000万円の制作費を渡したことが、「ザザンボ」の制作に繋がったのです。

その制作費で事件の取材を重ねた渡辺氏は、数々の証拠を掴みます。

少年が盗んだとされていた女性教師の預金通帳から、少年以外の何者かが全額を引き下ろしていたということ、1000万円もの生命保険をかけられていた少年は家庭内で慢性的にいじめられ、”家族の厄介者”として扱われていたという村人たちからの証言…

さらに少年の級友からは、少年が祖父に首吊りの方法を教わっていたという証言まで…。

渡辺氏は真相を究明する教師・渡辺文樹として主演し、実際の障がい児を自殺した少年役に起用。
全編を通じて「祖父が首を絞めて殺害した」いう彼の推論を作中で展開し、村の権力者の孫が少年の姉を孕ぼせ、その中絶費用のために、近親相姦で生まれたとする少年に盗みを強要していたことが少年の殺害事件に発展、それを村ぐるみの隠ぺい工作で封印したと結論づけたのです。

そして「ザザンボ」 は1992年の第5回東京国際映画祭で上映されるが、奥山氏と松竹は一般公開と配給を拒否。
その理由は自殺した少年の家のシーンで飾られている天皇家の写真が「天皇問題を扱わない」という当初の約束に反したということでした。

松竹側は公開への条件としてそのシーンを削除することを渡辺氏に提案したが、旧態依然とした村社会の象徴として”飾られている天皇家の写真”をどうしても表現したかったという渡辺氏はその譲歩案を拒否。
ここで松竹の配給中止も決定となったのです。

その後、自費での公開のために松竹からフィルムを買い取って自ら配給・興行を打ちますが、当然のことながらあらゆるところで問題が発生し、自殺した少年の遺族からも訴訟を起こされ、人権問題にも発展しています。

もちろんこの作品の発表後も数々の訴訟問題を抱えることになる渡辺氏ですが、その象徴的作品として、「ザザンポ」の封印があるのです。




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