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「ウルトラQ」の後に制作した「ウルトラマン」は大ヒットしたのは、ご存知の方も多いでしょう。
ここから現在も続くシリーズとなったのですが、深いテーマを盛り込む円谷プロの姿勢は健在でした。
それが最高潮に達し、現在も高い評価を獲得しているエピソードが「帰ってきたウルトラマン」(1971年・TBS系)…
第33話「怪獣使いと少年」です。
これは封印作品ではないのですが、あまりに描写が生々しく、悲劇的なストーリーだったために、TBSのプロデューサーが激怒したという、いわくつきの回なのです。
監督の東條昭平は、いくつかのシーンを撮り直しさせられたあげく、助監督に降格…
メイン脚本家だった上原正三は、ストーリー全体に影響する重要なエピソード以外、担当をはずされてしまいました。
では、いったいどのような内容だったのでしょうか?…
話は川原にある廃屋のそばで、身長の半分以上はあるスコップを持ち、一心不乱に穴を掘る少年にスポットが当てられています。
奇妙な行動を住人たちは怪しみ、少年は宇宙人が化けた姿だという噂が広まっていました。
そうして少年は不良たちから、ひどいイジメを受け始めるのです。
少年を頭だけ出した状態で埋め、泥水をかけたうえに、自転車で轢こうとする不良たち…
すんでのところで、主人公のMAT隊員・郷秀樹(団次郎)に救われるのですが、その後もイジメは終わりませんでした。
お粥を炊く鍋を蹴っ飛ばす…
さらに、少年が泥まみれの米をかき集めようとすると、下駄で米を踏みにじる…
悔しさで涙を流す少年に、連れてきたシェパードをけしかける…
「本当にウルトラシリーズ?」と疑いたくなるほどの執拗なイジメ描写だったのです。
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その後、郷は廃屋に住む男・金山に接触します。
金山は1年前にメイツ星から地球の気候調査にやってきた宇宙人でした。
調査の最中、川原で倒れている餓死寸前の少年を発見…
それ以来、親子同然に暮らしてきたといいます。
しかし、金山は汚染された地球の空気で、顔が半分ただれ、体も蝕まれてしまいました。
少年は金山がメイツ星に帰るため、川原に埋められた宇宙船を掘り起こしていたのです。
事情を知って、穴掘りを手伝う郷に、少年は語ります。
「おじさんとメイツ星へ行くんだ」…と。
地球は今に人間が住めなくなるから、その前に地球を捨てると言うのです。
そこに突然、竹槍で武装した住人たちが押しかけてきました。
少年が宇宙人だという噂に恐怖を抱き、暴徒と化したのです。
引きずられる少年を見て、たまらず廃屋から出てくる金山…
「待ってくれ!!宇宙人は私だ」…
襲いかかる群衆たちともみ合いになる中、警官が発砲して、金山は打たれて亡くなります。
失意に打ち震えて、うずくまる郷…
そのときでした。
金山が封印していた怪獣・ムルチが地中から現れ、街を破壊し始めたのです。
郷は逃げ惑う住人から怪獣を倒すよう要求されたのですが、その身勝手さにあきれ果ててしまいます。
しかし、思い直してウルトラマンに変身…
悲しい戦いが始まりました。
戦闘シーンの最初の攻防は、長回しで撮られています。
雨が打ちつけ、風が吹きすさぶ音が悲壮感を演出する名場面です。
ウルトラマンはムルチをスペシウム光線で倒しましたが、無力感に包まれたのか、しばし立ち尽くすのです。
そしてラストシーン…
金山が死んだ後も、少年は穴を掘り続けます。
その姿に隊員と郷の会話がかぶさりました。
「いったい、いつまで掘り続けるつもりだろう?」…
「宇宙船を見つけるまではやめないだろうな。彼は地球にさよならが言いたいんだ」…
以上が、「怪獣使いと少年」のストーリーです。
川原の廃屋、アイヌと縁の深い北海道出身の少年…
宇宙人の名前は在日韓国・朝鮮人に多いといわれる名字の「金山」でした。
沖縄出身の上原は、差別や偏見、集団心理の恐怖をテーマに、この脚本を仕上げたのでしょう。
根深い問題だからこそ、後味の悪い結末が相応しかったのかもしれません。
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