お茶の間でも大人気、長期にわたり多くの人に愛されている漫画といえば、「サザエさん」…
しかし、その人気が故に、多くの海賊版や無許可のグッズ販売などに悩まされているのです。
原作者の長谷川氏が「サザエさんうちあけ話」にて、「サザエさんの単行本をコピーした、いわゆる海賊版が国内に出回っていた」と語っており、発行元の姉妹社に損害が起きていたという事件も。
無許可でキャラクター画を使用した「サザエさんバス事件」以後、本作は他の作品以上に版権管理が厳しくなり、版権を管理する長谷川町子美術館に画像使用許可などを申請しても門前払いされていた時期がありました。
また、直木賞候補作家が原案のパロディ4コマ漫画も最強著作権チームによって、封印されていたのです…
「サザエさん」をパロディにした4コマ漫画が存在するのをご存知でしょうか?
その題名も「サザエさま」。
掲載したのは「東京25時」(アグレマン社)というタウン誌で、こつこつ広告を集めては、知り合いに安い原稿料で執筆してもらうという同人誌感覚の雑誌でした。
それが1970年末、長谷川町子氏が経営する姉妹社(現・長谷川町子美術館)の弁護士から著作権法違反、名誉毀損を訴える内容証明が送られ「100万円を払え」
と問答無用に突きつけられることになりました。
この「サザエさま」で荒稼ぎしたのならまだしも、掲載したのは少部数のタウン誌。
知的所有権の意識が高くなった現在でも、せいぜい自主回収とお詫び文で解決できた案件でしょう。
ところが姉妹社は「50万円」への減額と分割支払いを容認しただけで、この弱小出版社からきっちり全額を回収したといいます。
長谷川町子サイドが厳しい対応をしたのは、「サザエさま」の内容が悪質だったからではありません。
戦後の混乱期にかけ、爆発的な人気を誇った「サザエさん」は、常に海賊版や無許可のグッズ販売に悩まされてきました。
そこで長谷川氏は、1970年になると権利関係を管理する姉妹社に著作権の専門家を集めました。
実際、姉妹社は、同年に著作権法違反の先駆的訴訟となった「サザエさんバス事件」でも勝訴します(1975年判決)。
運が悪いことに、この時代の最強著作権チームに、「サザエさま」は見つかってしまったわけです。
現在でも「サザエさん」が人気を誇っているのは、長谷川町子と姉妹社が、いち早くそのプランドイメージの価値に気づき、保持した結果といえるでしょう。
今でも著作権を継承した長谷川町子美術館の著作権絡みの対処はディズニー並みといわれています。
そのテストケースになってしまった「サザエさま」ですが、この作品の原案は、騒動の5年後に「スローなブギにしてくれ」(角川書店)で直木賞候補になった人気作家の片岡義男なのです。
人気作家の有名になる前の「パロディ作」。
読んでみたいところですが、残念ながら、この「お宝」作品が日の目をみることはないでしょう。
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